「公に上映禁止」「跡形もなく消えてしまった」
1971年製作、このトンでもないフィルムが公開されたのはたった2度だけだ
プーラの映画祭とベオグラードの学生会館上映と
撮影から35年を隔て2006年に再上映され |
Jovan Jovanovic(Jovana Jovanovića)長編初監督作品
おそらくこれが日本語で初めての紹介ではないか
ユーゴの英雄チトーを讃えるパルチザンの革命歌をバックに
強盗殺人痴態の限りを尽くす若き車泥棒が
手振れも勇ましいハンドカメラ撮影映像の向こうから
われわれ良識的な観客を「一分間に一万語」のスピードで逆撫でしまくる作品です
「気狂いピエロ」?「ありふれた事件」?
この落ち着きに欠けたナンセンスとアナーキズム志向は
むしろ「あばしり一家」永井豪、「恐怖女子高校 暴行リンチ教室」鈴木則文の分野
または石原慎太郎「殺人教室」野坂昭如「てろてろ」似か
「イージー・ライダー」?そんなの忘れちまえ これがロックンロール・ムービーです |
「赤いペンキがついてるだけ」ガススタンドの遺体発見シーンのみならず
映画「バラ色の青春」は文革傾倒以前のゴダールへのオマージュに溢れている
矢継ぎ早に繰り出される引用含みのモノローグ、観客へ語りかけるメタ志向
だがこの軽快な映像に、わかりにくいところは一つもない
ゲージュツの自己陶酔も社会派の臭みもない
たとえばあの、人を喰ったエンディングは
「ホーリーマウンテン」や「書を捨てよ町へ出よう」 のそれとは全く違う
ホドロフスキーや寺山作品には問いかける映像作家の詩情があった
対し「バラ色の青春」のエピローグは、ほとんど客に対する脅迫だ
暴力映画エクスプロイテーションは星の数ほどあれど
ラスト・シーンを含め、これほどあからさまに客を愚弄したがる映画は類がない
セックス・ピストルズ「グレート・ロックンロール・スウィンドル」?
彼処にあったパンクという文脈すら「バラ色の青春」には存在しない
目まいを惹き起こさんとビヨンビヨン野蛮なズームを繰り返す監督Jovan Jovanovicは
しょせん映画、お前ら観客が見たいのはこんなモン、という冷笑をたやさない
襲撃されたフロントに突きつけられるライフルはビリヤードのキューでしかないし
一触即発の占拠地を囲む野次馬はカメラの前で笑顔を隠さない
肝心かなめのクライマックスに「笑うな」一言のない演出家がどこにいる
手を抜いた結果?いいえ 見せたいのはこの笑顔です
上のショット ひと気のない林の暗殺シーン
見知らぬ男の命乞いを暇つぶしに聞きたがっている「みんな」は
他でもないわれわれ観客を指している 男の目線を追ってくれ
要するに、これはただのエクスプロイテーションじゃない もっと、ずっと、タチが悪い
「バラ色の青春」はユーゴスラビアのみならず 世界中どこで上映しても疎まれるだろう
青少年の健全な育成を阻みまくる冒涜表現の裏には70年代ニヒリズムが濃い
一言でいえば有害不穏な映画 だが忘れるには面白すぎる
↓みなさん年末年始に70分つくって是非「バラ色の青春」を観てください(18歳未満お断り |
日本語字幕は英字幕からの孫訳です 8割くらいはあってる筈
Twitterで@dempowさんに手伝っていただきました
この映画は「earth with wound and fire」の obon-kobonさん経由で知りました
お二方いつもありがとう
読者諸君も良いお年を!
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